工房とんとん
管理者 上村孝宏
去る10月12日〜13日。
3時間半の道のり、ひたすら山形に向けて車を走らせました。目指すは鶴岡、『医療・介護・市民の地域共生を目指す全国大会』の会場です。今年は理事長と私の二人での参加。発表はないものの、私にとってはこんな全国規模で、しかも様々な職種の人々が集まる研修は初めてです。
2日間、4つの会場で様々なテーマのもと、実践報告やシンポジウム、体験などこれまた様々な形式での研修が続くので、プログラムを見ながら自分の関心のある会場を渡り歩くのです。
まず私が最初に選んだのは『映画の力でひらく地域共生の扉』というテーマの会場。閉館の危機にある映画館に社会福祉協議会が関わり、地域住民や福祉とのつながりの強い、新たな地域交流施設を始めているというお話や、介護や認知症を題材とした映画「ケアニン」「ピア」「オレンジランプ」等を手掛けたプロデューサーさんのお話でした。映画作成については、実際の現場での声を拾いつつ誤解のない作品をつくるというのは簡単なことではないと思いますが、それでも映画は啓発などという堅苦しいものではなく、社会課題を多くの人に知ってもらうための最高のツールであり、こういった作品を送り出してくれる方々がいることは心強いなぁと改めて実感しました。
ところで、今回2日間で9つの研修を回りましたが、すべてを書き上げるとただの報告書になってしまうので、他に特に印象深かった事を記事にさせていただこうと思います。
『障害のあるなしを超えて、つながるためのアート・ワーショップ』これは、30代で視力を失った彫刻家の三輪途道さんが、障害者と健常者がともに楽しめることを目的に作った「みんなで楽しむ上毛かるた」を使った体験研修でした。
「上毛かるた」とは群馬の自然、産業、歴史などを読んだ郷土かるたで、群馬県の人にとっては言葉を見れば絵が、絵を見れば言葉がわかる位なじみのあるものなんだそうです。絵柄が彫刻で立体的に掘られた木製上毛かるたを、私は目隠しをした状態でその絵がどんな風景を掘ったものか、指先に神経を集中させながら読み取ろうとしました。
しかしシンプルなはずのその彫刻の絵が、触覚だけではどうしても読み取ることができません。もちろんこのかるたになじみがない
こともありますがここまでわからないとは…。
そうなると早く目隠しを解いてどんな絵なのか確かめたくて仕方ありません。
しかし、ここで三輪さんが一言。「そのままそのカードは袋にしまってください」と。え〜っ、しまっちゃったら確認できない。
そう思いましたがまさに視覚障害の方は日常がそうだったのです。触ってもわからないものは、それが何だったのか気になりながらも確かめる術がないのです。かるたの絵柄が何なのかわからない私には、隣で「ここの曲線は川だよ。上にある三角は山だよ。」と教えてくれる人がいなければ、一生確認できないということなのです。
三輪さんもおっしゃっていました「目が見えないからって指先でなんでも読み取れるなんて事はないのですよ」と。「だからサポートは必要なのです」とも。私がイメージする不自由さ以上に、日常にいくつもの歯がゆさを抱えていることを目の当たりにした気がしました。そしてこの経験は今後の支援にも生かせるとても良い経験となりました。
今大会では、萌気会からも2つ実践報告の発表がありました。認知症介護を利用者目線で行うことで、不安の訴えが減ったという実践報告と、小児がん末期患者の願いだった、自宅でクリスマスを過ごすということを他病院との連携で叶え、自宅で看取るという経験の報告でした。どちらも利用者さん、患者さんの心に寄り添った介護、医療で、身近でこんなにも心を通わす福祉・医療をされていることをとても誇らしく感じました。
医療、介護、福祉、行政、企業も市民も垣根なく集まって、このような研修ができることの意味はとても大きく、一歩前に進むために、それぞれが単独では難しいことも、共生の輪の中では解決策が見いだせる気がしました。皆が幸せに過ごせる社会を目指して。



