鈴懸おはようヘルプ
井口節子

 鈴懸のおしどり夫婦と言えば、皆さん信吉さんとキミイさんを思い出すのではないでしょうか?ヘルパーから見たお2人との一期一会をご紹介します。
 信吉さんの入浴介助で訪問すると、お風呂に浸かりながら越後三山を眺め、「昔は中ノ岳に何度も登ったんだ」と、山の思い出を聞かせてくださいました。中でもお気に入りだったのが、山の上で食べる味噌漬けのおにぎり。「山で食べるおにぎりは、最高にうまいんだ!」と、嬉しそうに話されていました。
 新潟日報に投稿されたエッセイや、ご自分で描かれた花の絵も、「これ、見てくれ」と嬉しそうに見せてくださいました。
 そんな信吉さんがいつも願っていたのは、「キミイとずっと一緒に暮らしたい」ということでした。
 一方のキミイさんは、「信吉は本当に無口で、いっそ愛想がねーて」と文句を言いながらも、結局は信吉さんの身の回りのことをせっせと世話していました。
 ある時には、「この前、本当に憎らしくて、頭を1回叩いてやったら、3回お返しが来たて!」と、笑いながら話してくれました。一回叩いて、3回返ってくる。なかなか激しい夫婦喧嘩ですが、話すキミイさんの顔は、とても楽しそうでした。
 信吉さんは無口で愛想がない。キミイさんは文句を言う。でも、心はちゃんと通じ合っていたのでしょう。同じ部屋で暮らし、笑ったり、文句を言ったり、時には叩き合ったり……。それでも、いつも2人は一緒でした。
 そして、信吉さんが亡くなられてから約1か月。今度はキミイさんが、信吉さんを追いかけるように亡くなられました。
 「ずっと一緒にいたい」、そう願っていた信吉さん。もしかするとキミイさんも、「しょうがねーなー。私も行くこて」と、いつものように文句を言いながら、信吉さんの後を追いかけて行ったのかもしれません。
 最後の最後まで、やっぱり2人は一緒。
 山の話をする信吉さんと、それを横で聞いているキミイさん。文句を言いながらも、しっかり世話をするキミイさん。
 笑いあり、ケンカあり、そして愛情あり。
 そんなお2人は、私にとって忘れられない、素敵なおしどり夫婦です。